2025年9月26日、X(旧Twitter)でダイソーの「書道液」の写真とともに「書道で使う液を墨汁って言いませんでしたか?」という投稿がされ、なんと1,500万回以上も表示されて大きな話題となりました。
書道で使う液を墨汁って言いませんでしたか? pic.twitter.com/CRH2INqrhG
— ネオジオン 青い彗星 (@rbfwf824) September 26, 2025
「書道液」と「墨汁」、名前は似ていますが違いはあるのでしょうか。
調べてみると、意外と奥が深い世界が見えてきました。この記事では、その違いや歴史、さらに関連する製品についてまとめてご紹介します。
書道に使う液体の基本
書道で筆につけて字を書く液体には、大きく分けて二種類あります。
- 固形の墨を磨って作るタイプ
- ボトルに入った液体タイプ
この二つをまとめて「墨液(ぼくえき)」と呼びます。
磨墨液と液体墨(墨汁)
さらに詳しく分けると、
- 固形墨を磨って作った液体は 磨墨液(すりぼくえき)
- 液体タイプである液体墨(えきたいぼく)の一般的な名称は 墨汁(ぼくじゅう)
つまり「墨汁」とは液体墨のこと。
メーカーや人によっては液体墨を「墨液」と呼ぶ場合もあります。
固形墨と液体墨の違い
固形墨は推古天皇の時代(西暦593年~628年)より前に中国から伝わった歴史の古いもの。一方、液体墨が誕生したのは昭和36年と、ごく最近のことです。
- 固形墨
- 年数を経るほど書き味が良くなる。長年ねかせた固形墨は価値が高い場合も。
- 液体墨
- 製造後は劣化していき、おおむね5年以内に使い切った方が良いとされています。
- 使用前に軽く振らないと煤(すす)が沈殿してしまうことも。
墨の原料は煤・膠・香料
固形墨と液体墨の基本原料は同じです。
- 煤(すす/松煙・油煙・カーボンブラックなど)
- 膠(にかわ:動物性タンパク質)
- 香料
液体墨の場合はこれに「水」と「防腐剤」が加わることがあります。また、膠の代わりに合成樹脂を使う製品もあります。
膠の墨汁と合成樹脂の墨汁の違い
膠には、固形墨を固める役割や、紙の上で煤を定着させる役割があります。
膠をつかった墨汁は光沢や伸びも良いのが特徴です。
いっぽう、のり材など合成樹脂入りの液体墨は品質が変化しにくい、乾きやすいなどのメリットがありますが、膠とは書き味が異なります。
墨汁の色は煤によるもの
「煤」は油を燃やしてつくります。原料によって
- マツをもやした松煙(しょうえん)
- 植物性の油をもやした油煙(ゆえん)
- 天然ガスの不完全燃焼などでつくられたカーボンブラック
などがあります。
墨液の黒い色は煤によるものです。
着色剤のうち、水や溶剤に溶ける着色剤を染料、溶けないものを顔料といいますが、煤は顔料にあたります。
メーカーごとの墨汁の呼び名
メーカーによっては「墨汁」と「書液」など、異なる名称を使い分けています。
- 呉竹(Kuretake)
- 商標名「墨滴(ぼくてき)」を使用。(墨滴と墨汁の違い)
- 膠入りの「呉竹墨汁」は模造紙や上質紙に向き、
樹脂系の「ぼくてき」シリーズは半紙に向いています。
- 開明株式会社
- 膠入り製品を「墨汁」、樹脂系製品を「書液」と呼び分け。
また、固形墨をすってボトルに詰めた「磨りおろし生墨」という珍しい商品もあります。
今回は墨汁と書液の違いについてご説明させてください🙌
— 開明墨汁 (@kaimei1898) April 24, 2020
墨汁
膠【にかわ】と呼ばれるコラーゲンがたっぷり入っているので、光沢と墨の伸びがとてもいいです◎
書液
樹脂製ののり材を使用しているので、乾きやすさと扱いやすさはピカイチです✨
主原料が膠か樹脂かによって、おすすめが変るのです😳 pic.twitter.com/g8wG571Lyo
「書道液」という名称は明確な定義なし
「書道液」という名称に明確な定義はないようですが、各メーカーでは特色のある墨汁を「書道液」として販売している傾向があります。
- 呉竹:「カラー書道液」「洗って落ちる書道液」など
- ダイソー:「練習用書道液」「筆が戻りやすい書道液」「洗うと落ちやすい書道液」
つまり「書道液」とは、一般的な墨汁の中でも、特色や用途を強調するためにつけられた商品名であるといえます。
「洗濯で落ちる」タイプの墨汁/書道液
さきほどの項目でも紹介しましたが、最近では、汚れても洗濯で落ちやすいタイプの墨汁も販売されています。
ただし、通常の墨汁より色が薄く、専用の紙を使わないとにじみが大きい、水で落ちてしまうため清書やコンクール提出には向かないといったデメリットもあります。
洗濯で落ちる液体墨のおち具合を普通の液体墨と比較検証した記事もありました。かなりキレイに落ちますが、完全に落とすことは難しいようです。
また、落ちやすいタイプの墨汁に水を吹きかけてみた記事では、洗濯で落ちやすいタイプの墨汁はだいぶにじんでしまっていました。
にじみにくく、そこそこ洗濯で落ちやすい「清墨」
また、サクラクレパスからは「清墨」という製品もあります。
これは「落ちは弱いがにじみにくく、汚れも落としやすい」という中間的な性質を持っています。
まとめ
「書道液」と「墨汁」の違いを調べてみると、
- 墨液は液体タイプの液体墨(墨汁)と墨をすって作る磨墨液に分かれる
- 液体墨の一般的な名称が墨汁
- 墨液(墨汁や磨墨液)の中で、特色のある液体墨が「書道液」と呼ばれている
- 液体墨は材料が膠か合成樹脂かによって書き味や使い方が変わる
- Kuretake(呉竹)の「墨滴(ぼくてき)」は商標名。
- 開明株式会社は膠をつかっている製品を「墨汁」、樹脂原料を使用しているものを「書液」と分けている
ということが分かりました。
SNSで話題になったダイソーの「書道液」も、こうした背景を知ると「ただの墨汁」以上の意味を持っているように思えます。書道の道具の世界は奥が深いですね。
